板山小学校のビオトープ
−完成までの足跡−

                            
 板山になぜビオトープを?

「よもぎ池」それは、板山小学校にあるビオトープです。半田市内の中でも最も自然に恵まれた学校になぜ  ビオトープを?という疑問がわくかもしれません。実際、本校の中には「よもぎの森」と言われる、開校当時にPTAと職員のどんぐり作戦によって創られた雑木林があり、そこには、夏ともなるとクワガタやカブトムシを毎日のように  見ることができます。また、校内に野ウサギも出没するのです。こんな環境に恵まれた学校はそんなに多くはないと思います。しかし、環境に恵まれていることと、子どもたちが自然に親しんでいることは別物ではないでしょうか。また、自然に親しんでいるからと言って、環境を大切にしようとか、自然を大切にしようという気持ちをもっているかについても同様に別物ではないかと思うのです。豊かな自然に思いっきりふれあい、そうでない環境を知ったり、自然が破壊される現象に出会ったりすることで自然のありがたみが分かり、自然を大切にしよう、環境を大切にしようという気持ちが芽生えていくのではないのでしょうか。そこで、自然に恵まれた板山小学校にビオトープという自然に親しむきっかけを提供することにより、より自然と密接にふれあい、自然を学ぶことができるのではないかという思いが板山小学校のビオトープにはあるのです。

 ビオトープってなあに?

ビオトープを作り上げるための準備会を立ち上げるために、PTAで再三会合がもたれました。板山ビオトープをどんなものにするのか、場所は、名前は、どんな設計をするのか、どんな生き物を放流するのか、等々が検討されました。また、PTA広報部によって情宣活動も右のように行われました。準備会は、6月に行われたのですが、1ヶ月にわたってPTA役員を中心にビオトープの構想が練られたのです。
                            
 完成までのスケジュールは?
  
問題の資金面ですが、半田ライオンズクラブより資金提供を受け、不足する分をPTAの労働提供でまかなうという形で調達されました。半田ライオンズクラブの資金提供なくしては、本校にビオトープは完成しませんでした。また、足かけ5ヶ月でできあがったわけですが、次の表のようなスケジュールが組まれました。

 月  進め方      
6月 ○ プレ準備会(1日)
     ・ 進め方・ 準備会の立ち上げ
     ・ これが板小の「ビオトープ」児童募集
   ○ 第1回準備会(22日)
     ・ ねらい・ 活用イメージ(先生アイデア)
     ・ これが板小「ビオトープ」結果
     ・ 基本デザイン
   広報かわら版発行(ビオトープがやってくる)視察(23日内海中ほか)
   原専門員からのアドバイスライオンズクラブへの中間報告
7月 ○ 第2回準備会(6日)
     ・ 詳細デザイン・ 工程表・ 予算案・ 実行委員会の立ち上げ準備
   ○ 第1回実行委員会(20日)
     ・ 経過説明・ 今後のスケジュール・ 名称募集について
      広報かわら版発行(ボランティア募集案内ほかライオンズからの資金協力確定
8月  土木工事着工 (業者依頼)
     ・ 測量・ 給水および排水工事・ 地ならし工事・ 池掘削工事土木細部工事 (業者・実行委員等にて実施)
     ・ 池内面部工事・ 桟橋および池周辺部工事・地鎮祭(11日)草刈り・池作り(25日親子草刈り時に実施)
9月 ○ 第2回実行委員会(7日)
     ・ 今後の作業計画水入れ 炭焼き体験・貯水枡への投入
10月  水生植物の植栽・ 活着の確認・ 微生物等の状況確認ビオトープ完成式 (魚の放流ほか)
     広報かわら版発行(完成式)水生植物採集水生昆虫・微生物収集
 こんなビオトープが完成しました!

大小3つの池がつながり、それぞれの面積が、100u・35u・25u。合計160u。
池の最も深いところで水深70p。池の地下には、漏水を防ぐシートが施されています。また、ビオトープへの水は、体育館に降った雨を利用しています。雨水を一時貯水槽に貯め、分離槽で竹炭によって不純物を取り除く設備も併設されています。増水時期の対策として、側溝へとつながる排水設備まであります。真夏の暑い盛りの時期の草刈り作業や池の底の整地作業、ビニルシートを貼ったあとへの土を盛る作業は本当にたいへんなものがありました。PTAおよびボランティアの方々の労力の賜です。以下に板小ビオトープの現況と断面を紹介します。

 今後はどうするの?
  
最近の子どもたちは、自然の中で思いっきり遊ぶことが少ないと言われています。家庭に戻ればテレビゲームやテレビ、雑誌にかじりつく子がいたり、塾やお稽古ごとに忙しく走りまわる子がいたりします。そんな子どもたちにこそ、自然に思いっきり浸らせる機会を与えることは大切なのではないかと思うのです。こんな機会を大切にすることが子どもたちの感性や情操を豊かにすることにつながるのではないでしょうか。
今、ビオトープは流行のように中学校や小学校、教育施設で創られています。自然と接することを忘れてしまった子どもたちに、身近なところで自然に出会わせてあげたい。そんな思いが込められているようにも思います。

本校ビオトープの完成式で、本校児童会役員がこんな言葉をPTA、ライオンズクラブ、関係者の前で発表してくれました。
「私たちは、板山の自然をもっと知るために、このビオトープをいろいろなことに活用していきたいです。このビオトープを作るために、それぞれの学年でいろいろな活動をしています。6年生と4年生は、木の道を作る活動。3年生は、竹炭で水をきれいにする活動です。このように、ビオトープをどんどん自然に近い池にしています。ライオンズクラブのみなさんと、ビオトープ実行委員会のみなさんからの素敵な贈り物を、これからも大切にしていきたいと思います。」板山小学校の子どもたちに、自然と身近に出会える場が与えられたのです。教師の立場からすると、まさに、教材は整いました。この教材をどのように活用するかは、教師の手に委ねられていると思います。ぜひ機会がありましたら、「こんな活用はいかが」と、板山小学校の職員に声をかけていただけると幸いです。板山小学校の児童が自然を愛し、自然と親しみ、自然に働きかけのできる、そんな子どもたちになるよう模索していきたいと思っています。今後は、ビオトープがボウフラ池やゴミのたまり場、自然消滅なんてことにならないよう守り育てていきたいと思っています。来年の夏、この池でたくさんの魚の稚魚が産まれ育つこと、ヤゴがトンボに羽化する姿が見られること、ホタルが池のまわりを乱れ飛ぶことなど…夢には限りがありません。そんな日が来るのが今から楽しみです。